ただ自由にやらせるだけでは創造力は育たない? 子どもの創造性を伸ばすために本当に必要な環境とは
投稿日:2025年12月23日

「自由にやらせる」だけだと、意外と創造力は育たない
「創造力を伸ばしたいから、自由に作らせています」
創造性をテーマにした教育の現場や、子ども向けサービスで、よく聞く言葉です。
確かに、創造という言葉には「自由」「発想」「ひらめき」といったイメージがつきまといますし、自由にやらせてみることから生まれる成果もあります。
けれど実際の現場では、
自由にしているはずなのに手が止まってしまう子。
何を作ればいいのか分からず、迷ってしまう子。
そんな姿を見ることも少なくありません。
この記事をご覧の方の中にも、心当たりがある方がいるのではないでしょうか。
創造力を育てるつもりが、かえって創作しにくい環境を生んでしまう。
これは、創造型教育の現場でよく起こる矛盾です。
完全な自由は、創造性の発揮に役立つのか?
これは、私が広告の現場でものづくりをしてきた経験から感じていることですが、
実は「完全に自由に作れる状態」というのは、作る側からすると意外とやりづらいものだったりします。
例えば、テーマも条件もない広告の企画があったとします。
決まっているのは、告知する商品だけ。
そんな状態で上司から仕事を振られたら、
あなたの頭の中には、次のような疑問が次々に浮かんでくるのではないでしょうか。
「どんなコンセプトなのか?」
「誰が見る広告なのか?」
「映像で作るのか、それともポスターなのか?」
「いつまでに作ればいいのか?」
一見すると自由そうに見えますが、
いざ取り掛かろうとすると、どうすればいいのか分からず、かえって思考が止まりやすくなります。
そうならないように、多くのクリエイターは仕事に取り掛かる前、
無意識のうちに次のようなことを行っています。
- テーマを決める
- 条件や制約を置く
- 目指す方向性を仮に定める
作業に入る前にこうした起点が決まっていることで、思考のスタート地点が定まります。
「この商品は10代の男の子向けなんだな」
「今回は2週間でポスターを作ればいいのか」
「なるほど、コンセプトは『爽やかな夏』の制汗剤なんだ」
こうなってくると、自然とイメージが広がってくるのではないでしょうか。
多くのクリエイターは、このように起点を定めることで、創造性を発揮しやすくなります。
創造において「起点を定める」ことは、とても重要です。
これは決して自由を奪う行為ではありません。
創作するための足場をつくる行為なのです。
子どもの創造力にも必要な「軸」
商業クリエイターの例を挙げましたが、
子どもの創造性においても、この考え方は同じです。
例えば、夏休みの自由研究を思い浮かべてみてください。
学校から「自由研究をしてきてください」とだけ言われた場合、
いきなり絵を描き始めたり、ノートにまとめだしたりする子は多くありません。
まず行うのは、「何をテーマにするか」「どんなものを作るか」を考えることです。
この考える時間こそが、先ほどの「起点」や「軸」を定める工程にあたります。
自由研究が難しいと感じられやすいのは、
この軸を自分で決めなければならないからです。
では、ここで
「料理に関すること」「3日くらいでできるもの」
という軸が示されたらどうでしょうか。
「珍しい料理に挑戦してみようかな」
「地域独特の料理を調べてみよう」
「アイスキャンデーを作ってみたい」
このように、軸があるだけで発想はぐっと広がります。
実は創造力の発揮には、
完全な自由よりも、ある程度の軸があった方が良い場合も多いのです。
【参考文献】
『制約は創造を生む』東北大学大学院薬学研究科教授 岩淵好治氏
ダイヤモンドオンライン『制約があると創造性が上がる』
創造を妨げる軸と、支える軸
もちろん、軸の作り方を間違えれば、発想は狭くなります。
- 正解が一つに決まっている
- 手順が細かく指定されている
こうした軸は、子どもの考える余地を奪ってしまいます。
一方で、
「どんな国の料理が気になる?」
「外国の料理のどんなところが知りたい?」
といった問いかけであれば、子どもは自分で考え始めることができます。
子どもが創造力を使う場では、
あくまで子ども自身が主役となり、
大人は裏側からそっと支える存在であることが理想です。
Bee Creative(ビークリエイティブ)が目指す創造型教育
私たちBee Creativeの教材も、こうした考え方をもとに設計されています。
- 考えるテーマ(軸)は示す
- 考え方や思考の進め方は示す
- しかし答え(成果物)は決めない
問いは共有しますが、その答えは一人ひとりに委ねます。
この構造によって、
「何をすればいいか分からない自由」ではなく、
「この問いに対して、どうすればいいだろう?」と考える自由が生まれます。
もちろん操作を身につけるための見本や練習課題もありますが、
最終的には、どのコースでもテーマという軸だけが与えられ、
学んだことを使って制作できるよう設計されています。
これは、高校や大学、さらには社会に出てからも役立つ力です。
これからの社会では、テーマだけが与えられ、そこに自分のスキルをどう活かすか
が問われる場面が増えていくからです。
縛りがあるからこそ、個性が出てくる
軸を定めると、みんな同じものを作ってしまうのではないか。
そう感じる方もいるかもしれません。
ですが実際には、
どんなに条件を揃えても、完成する作品にはその子の個性が表れます。
同じテーマ、同じスタート地点だからこそ、
視点や構成、工夫の違いがよりはっきりと見えてくるのです。
何でもありの自由より、条件付きの自由の方が、
意外と考え方の違いは浮かび上がりやすくなります。
これは、創造を才能ではなく、思考のプロセスとして捉えているからこそ見えてくる現象です。
おわりに
Bee Creativeが大切にしているのは、
創造性を放任で育てることではありません。
迷子を生まない。
安心して試せる。
失敗しても考え直せる。
そんな環境を設計することを、私たちは大切にしています。
創造は、無秩序の中ではなく、
安心できる構造の中でこそ育つ力です。
自由と縛りは、対立するものではありません。
縛りがあるからこそ、自由は意味を持ちます。
創造力は、生まれつきの才能ではありません。
適切な環境の中で、誰もが育てていける力なのです。
この記事を書いた人

- Bee Creative事業責任者
-
ICT教育および教育コンテンツの企画制作に長年携わり、ITを使いこなす力の育成を軸に教材開発を行う。
現役のJAPAN MENSA会員でもあり、学生時代は米国カリフォルニア州の大学へ留学し映画学を専攻。第1回妙善寺映画祭審査員特別賞受賞。教育だけでなく本格的な映像制作・表現活動に取り組むクリエイターの側面も合わせ持つ。
現在は教育分野での知見とクリエイティブ領域での経験を掛け合わせ、創造力の育成をテーマにした学びに資する教材開発と普及に力を注いでいる。

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